先日、ご予約いただいたのは、32歳のキャビンアテンダントの女性。
丁寧な言葉遣いと穏やかな笑顔が印象的で、
「この仕事をしていると、人に安心してもらうことばかり考えてしまって…」と、
静かに微笑んでいた。
でもその瞳の奥には、どこか緊張と怯えがにじんでいて──
会話の中で、ぽつりと、こんな言葉をこぼしてくれた。
「男性に触れられるのが、怖いんです。
きっかけはもう覚えてないけど……
気がついたら、“優しさ”すら信じられなくなっていて」
それでも、今日こうして女性用風俗の予約ボタンを押したのは、
「触れられたい」と思う気持ちが、どこかに残っていたから。
快感のためでも、寂しさのためでもない。
ただ、“安心して誰かに触れられる”という感覚を、もう一度感じてみたかった──
そんな彼女の想いを、僕は丁寧に受け止めたいと思った。
この物語は、
“快感”よりもずっと深い場所にある、“癒し”に触れた一人の女性の、静かな記録です。
「怖いって思っちゃうのに、本当は……」
言葉にならなかった気持ちが、少しずつ形になっていく時間
「はじめまして」
そう挨拶を交わした瞬間、彼女はやわらかく微笑んだ。
でも、どこかで**“心を張っている”ような空気**が伝わってきた。
清潔感のある服装、整った所作、穏やかな声色。
きっと普段から「ちゃんとした自分」でいようと努力してきたんだろう。
でも、そうやって気を張るのに疲れたからこそ、
この扉をそっと開けてくれたのかもしれない。
カウンセリングシートを見ながら、ゆっくりと話をする。
「……正直に言うと、ちょっと怖いんです」
「男性に触れられるのが。自分でも理由はうまく説明できないんですけど……
近づかれると、体が強ばってしまって……」
それでも、ここに来てくれた。
本当は、誰かに触れてほしい気持ちも、どこかに残っていたから。
「頭では“大丈夫”って思っても、体がついてこなくて。
でも、自分の心が置き去りにされない場所なら……少しだけ、触れられてみたいなって」
彼女の言葉は途切れがちで、どこかで自分を責めているようにも感じた。
だからこそ、
「今日は、あなたの“ペース”を一番に考えますね」
そう伝えたとき、彼女はふっと息を吐いて、はじめて背中から力が抜けた。
希望された内容は、とてもシンプルで優しいものだった。
- 手をつないでいてくれたら安心する
- 声をかけながら進めてほしい
- 無理だと感じたら、すぐに止めてほしい
- 無理に感じさせようとされるのは苦手
そのどれもが、“怖さを隠すための壁”ではなく、
“心を開きたいけど、まだ少しだけ怖い”という気持ちの証だった。
彼女が今、必要としているのは──
「快感」ではなく、「信じてもいいと思える優しさ」。
その空気を壊さないように、
静かに、あたたかく、そっと寄り添う時間が、ここから始まろうとしていた。
「こんなふうに触れられるの、初めてかもしれません」
“安心”が少しずつ、彼女の体をやわらかくしていく
「冷たくないように、オイルあたためておきますね」
そう伝えると、彼女は小さく頷いた。
タオルの下で手足をきゅっと揃えた姿は、まだ緊張しているようだったけれど、
どこか“もう逃げない”という意志も感じられた。
オイルを垂らして、足首からそっと手のひらを滑らせていく。
肌がやわらかく温かい。
「CAさんって、やっぱり立ち仕事多いですよね? 脚、むくみやすかったりしますか?」
「……そうですね。あと、機内って意外と乾燥してるんです。
だから降りたあとはパンパンに……脚が“ずっしり”って感じになります」
「飛行機ってそんなに乾燥してるんですね。乗るたび喉がカラカラになるの、納得です」
「ふふ。お水くださいって言われる理由、それです。
あとは……マスク生活が楽すぎて、素顔で接客戻れるか心配です」
そんな日常の話をしながら、
ふくらはぎから太ももへと、やさしくゆっくり撫でるように流していく。
彼女の足先が、さっきよりリラックスしたようにふわっと沈んでいく。
「……こうやって誰かと話しながら触れてもらうのって、不思議ですね。
すごく、普通のことみたいに感じます」
「それが本当は、普通のことなんだと思いますよ。
怖さを感じない触れ方って、ちゃんとあるんです」
腰のラインをなぞるとき、彼女は少し身じろぎしたけれど──
すぐに深い呼吸とともに、背中から力が抜けていった。
「最近、どんなときにいちばん疲れます?」
「……うーん。たぶん、“ちゃんと笑っていなきゃ”って思うとき。
機内って、誰に見られてるか分からないじゃないですか。
“今日、無理かも”って日でも、笑わなきゃいけないから……
なんか、顔って筋肉だけじゃないんだなって思います」
「それ、すごく分かります。
笑顔って、意外と心のエネルギー使いますよね」
オイルを手に足しながら、背中から肩甲骨の内側、首筋へと流す。
会話の合間に、彼女の体温がほんの少し上がってきているのが分かる。
「……なんだか、体の奥があったかくなる感じがします」
「冷え性なんですけど、今は“人に触れられてるから”って感じです。不思議ですね」
「そう言ってもらえると嬉しいです。
今日くらい、ぜんぶ脱力しててもいいですよ」
「……はい。がんばらないで、いいって思える時間、久しぶりです」
心を閉じるクセのあった人が、
「触れられるのも悪くないかも」って、
自分で気づいてくれる瞬間。
この静かな空間に流れていたのは、
マッサージという“施術”ではなく──
もっと深い場所で生まれる、ささやかな“信頼”だった。
「触れられてるだけなのに…こんなに…」
エロい話に照れてた彼女が、気づけばカラダを預けていた
鼠径部を避けながら、内ももを丁寧に撫でていたときだった。
彼女が小さく笑いながら、こんなことを言った。
「……今ふと思い出したんですけど、
マッサージ屋さんで、内ももまで触れられると“いやらしい”って思ってたなって」
「うん、それ分かります。
“この人、どこまでやる気なんだろう”って、ちょっとドキッとしますよね」
「そうそう。でも今は……それよりも、“あ、ちゃんと触れてくれてる”って思える。
なんか……自分の体を雑に扱われないって、こういうことだったんだなって」
太ももの付け根を、ぎりぎりのところでなぞる。
ぬるりとオイルが滑り、くちゅ…という湿った音が静かに響いた。
彼女は一瞬、ビクッと肩を震わせたけど、
逃げるような気配はなくて──
少し、恥ずかしそうに口を開いた。
「……今の音、ちょっとやらしかったですね」
「うん。でも、なんかいい音だった。
体がちゃんと“気持ちいい”って言ってる証拠かも」
「……ふふ。
あんなに“触れられるのが怖い”って言ってたのに……
今じゃ、“そのまま続けてください”って思っちゃってる自分がいます」
そう言った彼女の顔は、うつむきながらも、どこか嬉しそうだった。
腰のくびれに手を添えながら、
背中からヒップのあたりを、包み込むように撫でる。
骨盤のきわに触れたとき──彼女がふっと息を呑んだのがわかった。
「そこ、ちょっと…ずるいです」
「どうずるいんですか?」
「なんか、“この先にある場所”を思い出しちゃうというか……
想像させられるのって、ちょっと、ずるいですよね」
彼女の言葉はやさしく、笑っていたけど──
その奥に、確かに“スイッチ”が入った気配があった。
胸元にそっと手を添えて、布越しに輪郭をなぞる。
直接触れてはいない。けれど──
彼女の息が、わずかに乱れていく。
「こんなふうに触れられるの、なんか……
感じるっていうより、包まれてるって感じですね」
「触ってるほうも、今は“何かさせよう”とは思ってなくて。
ただ、“君のこと、ちゃんとここに置いてるよ”っていう感覚です」
「……それ、ちょっと……ずるいな」
再び鼠径部へ戻り、脚の付け根に手を滑らせる。
布の上から。けれど、もう明らかに、そこにある熱が高まっているのが分かる。
「……ねぇ、こういうときって、“まだダメです”って言うべきですか?」
「ううん。“まだ”じゃなくて、“大丈夫そう”って言ってくれたら進めます」
「……じゃあ……」
彼女はタオルを握りしめたまま、ぽつりとつぶやいた。
「……大丈夫そう、かも」
言葉と一緒に、脚が少しだけ、開かれた。
この夜、彼女は──
“される”ことではなく、“許せる”ことを、
自分の中でゆっくりと選び始めたのかもしれない。
彼女の脚の付け根をなぞっていた指が、
布の上から、ごく自然に、より中心へと滑っていく。
オイルで湿った肌の温度が高くなっているのが分かる。
その熱に触れるたび、彼女の吐息が、わずかに変わっていく。
「……ふっ……ん……」
はじめて聞いた、無意識の“声”。
「……今、声……出てた……」
そう自分で気づいた彼女は恥ずかしそうに顔をそむけたけれど、
もう、体は隠しきれていなかった。
「無理に我慢しなくて大丈夫だよ。声って、自然に出るものだから」
その言葉に、彼女はタオルの中で小さく頷く。
脚の間にそっと手をすべらせ、布越しに中心のラインをなぞる。
決して強くは触れず、あくまで“探るように、誘うように”。
「っ……あ……や……っ……」
さっきよりも明確に、息が引っかかるような吐息が混ざっていた。
「……そこ、ダメ……じゃないけど……っ、ずるい……」
声は震えていた。
でも、拒絶ではない。
彼女は自分でも止められないくらい、“気持ちよさ”に抗う術をなくしかけていた。
指を、オイルのぬるみごと深く滑らせて、
その中心を、あえて布越しにゆっくり、じわじわと撫でると──
「……っ、んんっ、やっ……っ、だめ……感じちゃう……っ」
吐息が、声に変わる。
「触れられてるだけなのに……なんで……こんな……っ」
脚がわずかに震える。
腰が、ほんの少しだけ逃げるように動いたけれど──
彼女は逃げなかった。
「……やだ、ほんとに……感じてる……っ、のに……止めたくない……」
その言葉を口にした瞬間、
彼女の体が、ようやく**“快感を受け入れる準備が整った”**ように感じた。
安心と羞恥、そしてほんの少しの本音が混ざったその声。
それこそが、彼女の“本能の入り口”だった。
「怖かったのに、安心して感じてる自分がいて……」
彼女がはじめて口にした、“自分を認める言葉”
施術が終わって、タオルに包まれたままの彼女は、
目を閉じてしばらく、静かに呼吸を整えていた。
室内に流れる音楽が遠くでゆったりと響いていて、
時間がゆるやかにとろけていくような、そんな空気が流れていた。
「……あの、さっき……声、出ちゃってましたよね?」
タオルの中から、恥ずかしそうに絞り出すような声。
その問いに、僕はゆっくり頷いた。
「うん。気持ちよさそうな声だったよ」
彼女は顔を赤らめて、笑った。
そして、ぽつりとこぼす。
「……自分でも、びっくりしてます。
“触れられるのが怖い”って言ってたのに、
気づいたら、“止めないで”って思ってて……」
その言葉は、今日一番の“彼女の本音”だった気がする。
「怖かったのに、安心して感じてる自分がいて……
今は、なんか……“感じてもいいんだな”って、思えました」
彼女はずっと、自分に“感じること”を許してこなかったのかもしれない。
でも今、こうして体を預けて、声を漏らして、
それでも怖くなかったという事実が、
彼女にとって大きな自信になっていた。
「……また来たら、引かれますか?」
「ううん。むしろ、“また来ていい”って思ってくれたことが、すごくうれしい」
そう返すと、彼女はタオルの中で小さく頷いて、
ほんの少しだけ、目を潤ませていた。
怖がりながら、それでも触れてみたかったこと。
誰にも言えなかった、欲しかった安心。
それを今日、ようやく言葉にできた彼女は、
ほんの少しだけ、“自分を信じてあげられるようになった”のかもしれない。
「怖い」って思う気持ちも、「触れてほしい」って願う気持ちも、
どちらも本当のあなた。 だから、どちらも大切にしていい。
男性に触れられるのが怖い。
でも、どこかで優しくされたいと思ってしまう。
その矛盾に、疲れてしまったことがある人は、きっと少なくないと思います。
彼女もそうでした。
「優しさ」すら疑ってしまう日々のなかで、
それでも、ほんの少しの希望を信じて、
“誰かに預けても大丈夫な場所”を探して、ここに来てくれました。
性感マッサージの目的は、快感だけじゃありません。
“安心して触れられる”という体験が、
“私は大丈夫かもしれない”という気持ちにつながることもあるのです。
触れられることは、恥ずかしいことでも、怖いことでもなくて──
本来は、ただあたたかくて、やさしくて、あたりまえに気持ちいいもの。
それを、ゆっくり思い出せたこの日の彼女は、
たしかに少しだけ、軽くなった表情で帰っていきました。
あなたにも、もし、
「怖いけど、本当は触れられてみたい」
そんな気持ちが心のどこかにあるのなら──
今日の彼女の体験が、そっと背中を押すきっかけになってくれたら嬉しいです。